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オフロードバイクと北海道の楽しい林道♪
by kawasaki_ninjya
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とある、友人の話 3
「20数年ぶりですからね、行ってみると、みすぼらしい親父がいましたよ。ぽつんと。

 俺も何をどう話して良いのか解らなくて、なかなか話できなかったんですけど・・・」

彼が話しだした会話はこういう内容だったらしい・・・




 父「元気にしていたか?」
 
 友「ああ・・・親父は?」

 父「仕事してるのか?給料はどうだ?ちゃんと暮らせているのか?」

 友「ああ、なんとかやってるよ・・親父は・・?」

 父「・・・俺は・・駄目だ。実は今借金取りに脅されている」

 友「借金取り?親父、まだギャンブルをやってるのか?」

 父「・・・・・・・・」

 友「おい、どーしようもねーな!おい」

 父「すまん・・実は今週中にどうしても20万返さなければ、俺はどうなるか・・ただではすまん
   事になってしまうんだ」

 友「しらねーよ!そんなこと!自分が悪いんじゃねーかよ」

 父「頼む、何とか20万、いや10万でもいい!助けると思って貸してくれ!」

 友「いい加減にしろよ・・何十年かぶりに会ったと思ったら金の無心かよ!」

 父「俺もギャンブルを止める。本気で反省しているんだ。借りた金も月々ちゃんと払う!
   だから・・だから・・・頼む。頼めるのはもう、お前しかいないんだ」

 友「だから・・知らねえって・・」

 父「頼む・・本当は俺だってお前達と離れたくなかったんだ・・・
   しかし・・・借金の事でお前達に迷惑がかかる前にと泣く泣く家を出たんだ。
   父さんは本当はお前のことが可愛くて可愛くて離れたくは無かった。
   離婚してからも、俺はたった一人でずっと寂しい思いをしてきたんだ。」
 
 友「・・・・・・・・・・・・・・・」


彼はこのとき、狼狽していた。

自分を棄てたと思っていた父親があろう事か借金の頼みをしてきたのだ。

この憤慨極まりない頼み事に、怒りも通り越して、非常に哀れに見えたという。

自分の思い出の中にはいつも大きな父親がいた。

それが今では目の前にいるみすぼらしい初老に変わってしまっている。

なにより、こんな嫌な、そして悲しい時間は一刻も早く終わらせたいと思ったそうだ。

「・・・・いくらいるんだよ・・」と気がついたら言葉が口から出ていたそうだ。

「いくらなんだよ?借金って」

「取り合えず・・20万あれば・・」

「取り合えずって!20万貸しても、すぐに他の取り立てがあるんじゃ意味ねーだろっ!

 いったいいくらあればいいんだよ!」

「ご・・50万・・」

「50万あればヤバイ借金は無くなるんだな?それでやっていけるんだな?」

「すまん・・・・・・」

この時、彼の心の中で「50万を叩き付けて、こんな奴とはもう縁をきってやる!」と

思っていたそうだ。

そして、その父親を待たせたまま、銀行へ行き、自分の貯金と足りない分はキャッシングで

補い、すぐにまた父親の元へ戻り、

「ほら!50万貸してやるよ。これでいいんだな?大丈夫なんだな?」

「すまない・・すまない・・・しかし、絶対に毎月少しでも返すから・・絶対・・絶対にだ」

「ああ、ちゃんと返せよ。俺はもう行くからな。それから、お袋にはこのこと言うなよ」

そう吐き捨てて彼は帰ってきたそうだ。


帰り道、彼は車の中で泣いた。

それこそ、何十年かぶりに大泣きした。

自分でも、何故か解らない程涙が止めどなく出てきたそうだ。

様々な想いが去来していた。

父親がいなかった寂しさ、母の苦労、小さい頃の父との思い出、酔って帰ってきた母が言っていた

父親への恨み辛み・・そして、なにより20数年ぶりにあった父親が自分に借金をするために、

金のためだけに、連絡してきたという事実・・


「俺は初めてですよ・・あんな風に号泣したのは・・・」

彼はそう言って押し黙ってしまった。

私は「嫌な予感は正しかった・・」と思っていた。

「そうか・・そんな事が・・・しかし・・お前、なんで金を貸したんだ?
 
 そんなの金なんか貸してやる義理なんかねーじゃんよ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・でも・・」

「でも・・・・・・やっぱ親父ですから・・・」


「お前・・・馬鹿だな・・・・・」

こういうのが精一杯だった。

もう、彼に語りかける言葉がみつからなかったのだ。

彼の心は他人である私には解らない。

彼の気持ちは、彼にしか解らないのだ。

「まあ・・今度が俺が借金取りになって親父を脅しますよ」

そううそぶく彼の顔は寂しさが滲み出ていた。

私はまたもや、彼にかける言葉を見失っていた。


その後、彼の父親からの返済はいっさい無いそうだ・・・・・


そんな、とある、友人は今、一児の父親となった。

父親となった彼はこう言っていた。

「俺、父親になってよけい親父の事がわからんです。自分の子供に

なんで、そんな事できるのか・・わからんです・・」
by kawasaki_ninjya | 2007-05-23 15:29 | まじめなお話
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